EAS(Electric Air Suspension)

私の車は95年式のレンジローバーという英国車です。1960年代に基本設計されたV8 4L OHVエンジンに電子制御の補器をいっぱいつけた古代風の、現代のエコカーとは逆のなんとも効率の悪い車です。この車独特の機能としてEASというのがあります。いわゆるエアサスで、今ではバス、トラックや一部の高級車にも使われていて、普通ですが、十数年前はまだめずらしいものだったようです。乗り心地は独特で、船にゆらゆら揺られているような不思議な車です。機構的には、結構複雑でただのコイルバネと比べたら、トラブルは圧倒的に多いです。エアシステムは工場の生産設備などでも普通に使われていますが、メンテナンスが必要です。メンテナンスフリーというわけにはいきません。工場みたいに専任の設備保全員はいませんから、、所有者が保全係か? 車に積むにあたってよく考えたんでしょうが、故障は多いです。ただこの車の場合は、システムが比較的わかりやすく素人でもさわれる(精密機械には違いないが比較的大雑把)のとDIYの部品が出回っているおかげで、なんとか維持できています。

以下の整備を、新車ディーラでやったら、とんでもない費用がかかるでしょうが、DIYだと費用一割以下プラス自己責任ですみます。下の写真は、エンジンルームにあるエアコンプレッサーとエアの行先制御をするバルブブロックの入れ物です。横からエアパイプがいくつも出て、各スプリングやエアタンクに行っています。パイプ(チューブ)は空気圧器具に使われるものと同じもののようです。

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 ケースの中には、コンプレッサと電磁バルブがいくつも付いたバルブブロックというのが入っています。

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 中身を取り出したのが下の写真です。

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 コンプレッサは、ピストンが上下して空気を圧縮するタイプです。ピストンのシールを6年ほど前に交換しましたが、まだほとんど減っていませんでした。

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下は、前側のエアスプリングです。エアパイプが上から入っています。 

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 こういうパイプの接続部は、Oリングで気密を保っています。これがゴムなので、長年圧力を受けていると変形してきます。数年ごとに交換しないとエア漏れすることになります。なんとも微妙なシステムです。Oリングはバルブブロックやコンプレッサなど気密を要する部分に大量に使われています。1個数円の部品ですが、だめになるとエアが漏れて車高が上がらなくなったりで困ったことになります。

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 下は5年間、頑張ったOリングですが、いくつかは圧力に耐えて変形したりカチコチになったりしていました。 oring-1.jpg

下は前側のエアスプリングです。乗用車に多いコイルバネの中にダンパーが入るの形式ではなく別々についていてメンテナンスしやすいように考えられているようです。スプリングはシャーシとボディの間にはさまっていて、上下をピンで止めてある構造です。素人でもジャッキがあれば1時間ほどで交換できます。価格も、タイヤ一本分ぐらいで、そんなに高価な部品ではありません。

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 前からみると、こんな感じで、エアスプリングが膨らんで車体を支えているのがわかります。

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 はずした前側のスプリングです。左が5年間車に載っていたもの、右は新品です。新品は細いですが車に乗せて車重がかかるとすぐ膨らんでしまいます。エアサスのいいところの一つは積載荷重が変わっても(重くなっても)同じレベルを保てることで、重いのが載ると、車体が下がるので、バルブからエアが供給され、圧力が高まって元の高さに戻ります。スプリングは通常以上に膨らんで頑張ります。ゴム製で10気圧近い圧力がかかるため、固くなったり、やがてはひび割れたりで、いつまでもは使えません。車の使い方によるでしょうが、数年から10年(?)おきには交換必要です。

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こちらは後ろ側です。前と似た構造です。 

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 はずした後ろのスプリングです。左が4年使ったもの。右が新品です。

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幸いに自分でメンテナンスできるので、なんとか維持できています。言い方を変えれば自分でメンテナンスできるので楽しい車と言えます。